天秤資本主義宣言
LSC: Libra/Scales Capitalism

私たちの社会は今、様々な問題に直面しています。格差の拡大、将来への不安、国際的な緊張の高まり…。これらの根源を探ると、一つの構造的な問題に行き着くように思われます。それは、私たちの経済システムにおける「天秤の傾き」です。

本来、金融は実体経済(人々の生活や生産活動)を支え、円滑にするためのものでした。両者は相互に依存し、バランスを保つことで、社会全体の豊かさが育まれるはずでした。しかし現代では、金融が自己目的化し、短期的な利益や数値を過度に追求するあまり、実体経済を置き去りにし、その健全な成長を歪めています。この「金融と実体の天秤」の深刻な傾きが、経済的な問題に留まらず、社会全体の活力や安定をも損なっているのではないでしょうか。

「経済」とは、元来「経国済民」――国を治め、民の苦しみを済(すく)う――という広い意味を持っていたはずです。目先の利益や指標だけでなく、社会全体の幸福や持続可能性という、より大きな視点から物事を捉え直す必要があります。

複雑化した現代社会の問題を解決するために、全く新しいルールを夢想するよりも、まずは今ここにある「現実」を直視し、その複雑なシステムがどのように機能し、なぜ問題が生じているのか、その本質を冷静に洗い出すことが先決です。そして、問題の根本原因に働きかけ、システム自体を調整していく方が、より現実的で効果的なアプローチだと考えます。

試行錯誤の末にたどり着いたのは、結局のところ「何事もバランスが大事である」という、特に目新しいわけではない、しかし現代社会が見失いがちな「当たり前の真理」でした。薬も過ぎれば毒となるように、どんなに優れた仕組みや要素も、それ自体が目的化し、全体のバランスを欠いてしまえば、むしろ害悪となり得ます。

そこで私たちは、この普遍的な「バランス」の原理を、社会システムを理解し、改善していくための中核に据えることを提案します。その象徴として、古来より公平性や均衡を表してきた「天秤」を用い、経済システムを含む社会全体の様々な課題に対して、常に動的なバランスを取り戻し、維持していくための思考の基盤、すなわち「天秤資本主義(LSC)」を提示するものです。

この主義は経済のみではなく、広く社会一般を念頭に置くものですが、「資本主義」という体(てい)をとったのは、その発端が経済にあり、これが資本のバランスの問題であり、かつ具体的な改善目標として捉えやすいためです。しかし、この主義(イズム)自体は特定の経済体制に限定されるものではなく、あらゆる事象におけるバランス調整に応用可能です。重要なのは、LSCという「イズムの実現」そのものが目的ではなく、LSCという思考の枠組みを用いて「イズムによる現状改善」を達成することにあります。この実践性と現実変革への指向こそが、天秤資本主義の最大の存在意義です。