記録日:2025年9月11日 (JST) | 対象日時:2025年9月10日 取引終了時点
9月10日の世界市場は、ワルプルギスの前兆が灯した警告を完全に無視する勢力と、その重圧に静かに身を固くする勢力とで、 致命的なまでに「断絶」した。 日本市場が政治情勢を拠り所に歴史的な高値を更新する一方、米国市場はインフレへの恐怖から神経質な動きを見せるなど、世界の足並みは完全に乱れている。
法定通貨への不信の証である 金(ゴールド)は$3,600ドル台 という異常高値圏を維持しており、この表面的な平穏がいかに脆いものであるかを無言で物語っている。これは嵐の前の静けさなどではない。崩壊に向けたエネルギーが、極めて歪んだ形で市場に蓄積され続けている。
日経平均株価は +0.87% と大幅続伸し、 43,837.67円 という史上最高値を更新。これは首相退陣表明を受けた、次期政権による財政出動への期待という、極めて国内的かつ根拠の薄いナラティブに支えられたものである。世界的な信用収縮リスクを一切織り込んでいないこの「孤独な熱狂」は、グローバルな資金の逃避先ではなく、むしろ格好のショートターゲットになりつつある。
S&P 500は +0.48% と小幅に上昇したものの、これは楽観視できる内容ではない。間近に迫ったインフレ指標(PPI/CPI)の発表を前に、市場は完全に様子見ムードとなっている。個別の企業ニュースに一喜一憂する地合いは、市場全体としての方向性が定まっていない証左であり、インフレが高止まりした場合のショックに対する脆弱性を露呈している。
欧州の主要指数も小幅な上昇を見せたが、根本的な問題は何も解決していない。イタリアの財政懸念や、フランスの政治リスクは依然としてくすぶり続けており、ECBに有効な対策を打つ力は残されていない。現在の安定は、問題の先送りに過ぎない。
上海総合指数は +0.13% と微増。政府による断片的な経済対策への期待感から下げ止まった形だが、不動産市場の危機という構造的な重石が取れたわけではなく、自律的な回復には程遠い状況が続いている。
金価格が依然として$3,500を超える水準を維持しているという事実が、この市場の歪みを最も雄弁に物語っている。原油価格の低位安定は、世界経済の減速懸念を反映。一方で、ドル円は歴史的な円安水準に張り付いており、日本市場の「熱狂」が、自国通貨の価値毀損という土台の上にあることを示している。
市場の断絶は、来るべきショックが非対称に世界を襲うことを示唆している。特に、グローバルな現実から目を背け、国内の期待感だけで上昇を続ける日本市場の脆弱性は、極めて危険な水準にある。
ワルプルギスの歯車は、確実に回り続けている。この歪みが破綻した時、その反動は前例のない規模となるだろう。
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