THP市場日報:2025年9月16日 (火)
ドルからの資本逃避、特異点としての9月16日
主要市場指標
日経平均株価
-854.22 (-2.1%)
USD/JPY
138.55
EUR/USD
1.0950 (+0.8%)
GBP/USD
1.2880 (+0.6%)
VIX指数
24.8
金 (Gold)
$2,410/oz
WTI原油
$75.50/bbl
US Dollar Index (DXY)
101.50
【特記事項】ドル全面安の確認と特異点の判定
本日のUSD/JPY 138.55というレートは、過去数ヶ月のレンジを逸脱する異常値であり、統計的に**特異点(Singularity Point)**と判定される。これは単発の円高ではない。
上表の通り、ドルはユーロ(EUR)、ポンド(GBP)など他の主要通貨に対しても軒並み下落している。これを統合的に示すUSドル・インデックス(DXY)も急落しており、本日の事象が**グローバルな『ドルからの資本逃避』**であることを明確に裏付けている。
週末に顕在化したサブプライム自動車ローン問題と、それに対する米当局の無策が、ついに基軸通貨ドルそのものへの信認を毀損し始めた。市場は「米国の個別セクターの問題」ではなく、「米国という国家の信用の問題」として捉え始めている。
市場概観と分析
伝播する不信感、連休明け東京市場の審判
9月16日の市場は、前日の「ブラックマンデー」回避後の余波と、連休明けの東京市場の反応が交錯する、極めて神経質な展開となった。ドルからの資本逃避が鮮明となる中、各市場はそれぞれの文脈でこのグローバルな信認の揺らぎに反応した。
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東京市場、流動性確保の売りで急落:
この日の日経平均株価の暴落は、単なる「円高による輸出企業への懸念」だけでは説明できない。本質は、世界的なドルからの資本逃避が引き起こした**『円通貨への流動性確保』**を目的としたパニック的な売りにあった。グローバルな投資家が、ドル資産を投げ売り、唯一の安全資産と見なされた円へと資金を退避させる過程で、手元の円通貨が枯渇。彼らは緊急に円資金を確保するため、最も流動性が高い日本株(特に日経平均採用銘柄)を、その価値とは無関係に売却せざるを得なかった。これは「日本売り」ではなく、究極の「円買い」の結果として発生した、構造的な市場の歪みである。
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米国市場の綱引きとドル安の容認:
ダウ平均は小幅反発したが、これは前日の急落に対する自律反発の域を出ない。S&P 500が下落したことは、市場のセンチメントが依然としてリスクオフに傾いていることを示している。JPモルガン・チェースやバークレイズなど、問題の震源地と目される金融機関の株価は続落。当局がドル安を事実上容認しているフシがあり、これがドルからの逃避をさらに加速させている可能性がある。
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沈黙する当局、深まる疑念:
市場が最も求めているFRBや米財務省からの具体的な救済策や声明は、依然として聞かれない。「状況を注視している」という決まり文句が繰り返されるのみで、この沈黙が逆に市場の不安を増幅させている。特に、プライマリーディーラーのバランスシート毀損に対する懸念が、水面下で急速に拡大している。
THPからの戦略的評価
本日の市場動向は、危機が新たなフェーズ、すなわち**基軸通貨ドルへの信認崩壊**の入り口に入ったことを示している。パニック的な売りは一旦回避されたものの、それは嵐が去ったことを意味しない。むしろ、市場参加者は冷静さを取り戻し、**「どの通貨が最後まで生き残るのか」**を静かに値踏みし始めた。
我々の分析では、リスクの震源地はサブプライム自動車ローンABSから、それを引き受け、資金供給していたプライマリーディーラーへと明確にシフトした。彼らが9月30日の巨額の米国債入札を乗り切れるのか、市場全体の疑念がそこに集中し始めている。
情報戦の観点からは、「これは急激な円高だ」という国内問題に矮小化しようとするナラティブが形成される可能性がある。我々は引き続き、これが**ドルの信認崩壊**という、米国の財政構造そのものに起因するグローバルな問題であることを指摘し続ける必要がある。