2025年9月30日に懸念される「米国債プライマリ売却不成立」を、優しく解説します。
このページでは、これから起こりうる世界的な金融・経済の 重大ストレス・シナリオ を、便宜上 「ワルプルギス」 という呼称で説明します。
これは特定の思想や予言ではなく、複数の現象が重なることへの概念的な名前です。具体的には、以下の要素を含みます。
この一連の出来事は、国家財政を家庭の家計簿のように考える「家計簿財政」という考え方の終わりと、現代のお金の仕組み(フィアットシステム)の始まりを意味するかもしれません。
これらの現象が顕在化するのが 「遅くても2025年9月30日」 と予測されるため、この日を一つの目印としています(状況によっては前倒しの可能性もあります)。名前自体に深い意味はなく、説明上の便宜として用いています。
国も私たちと同じで、毎日お金を払ったり受け取ったりして生きています。税金が入ってきたり、年金や公共事業費を支払ったり。このお金の流れが止まると、国の機能は麻痺してしまいます。
たとえるなら、国の「呼吸」です。 息を吸って(収入)、吐いて(支出)、そのリズムが止まらないから私たちは生きていける。国にとってのお金の流れも、それくらい大切なのです。
この呼吸をスムーズにするために、国は 「国債」 を発行します。特に次で説明する「政府短期証券」は、日々の息継ぎを整えるための重要な道具です。
日米共に、政府の予算執行のために「政府短期証券」という特別な国債を発行しています。これは国の運営に不可欠な仕組みです。
つまり、 税金は最初からある「財源」ではなく、まず国が短期証券で立て替えたお金を「返済」するための側面 が強いのです。
ここで重要なのが、日本とアメリカではこの短期証券を含む国債の制度が大きく違うということです。
| 項目 | 日本 | アメリカ |
|---|---|---|
| 中央銀行の役割 | セカンダリ市場の安定大口顧客として日銀が存在するため、民間の銀行はプライマリ入札で積極的に国債を買うことができます。 | FRBは国債の 最初の販売(プライマリ入札) には直接参加できません。他方で、セカンダリでの買入やレポ等の流動性ファシリティを通じて金融環境全体へは影響し得ます(設計思想は日銀と異なります)。 |
| 特別なルール | 財政法で国の歳出は税収で賄うのが原則ですが、毎年「特例公債法」という法律を通して赤字国債の発行を可能にしています。 | 「債務上限」 という法律があり、政府が借りられるお金の総額に天井が設けられています。政治的な駆け引きの道具になることもあります。 |
| 買い手の動機 | 国内の銀行が主な買い手です。銀行は日銀の当座預金にお金を預けてもほぼ利息が付かないため、国債を買って資産として満期まで保有することを原則とします。 | 「プライマリー・ディーラー」と呼ばれる金融機関が主な買い手です。彼らは卸売業者のように、安く買って市場(セカンダリ市場)で高く売り、その差益で儲けることを最優先します。 |
よくニュースで「日本の長期金利が上がった」などと報道されますが、これは主に セカンダリ市場 で取引されている国債の金利を指します。一度発行された国債が、投資家の間で売買される市場のことです。
国債の最初の販売を入札形式で行うのが 「プライマリ入札」 です。アメリカ政府(財務省)が「これだけのお金を借りたいのですが、誰か貸してくれませんか?」と市場に問いかけます。
この問いかけに、十分な買い手がつかない状態が 「プライマリ売却不成立(入札不成立)」 です。
たとえるなら、国の「酸素マスク」が外れるような事態です。 呼吸が苦しくなった時に頼るべき酸素(お金)が供給されない。これが起きると、国のお金の流れが止まりかけ、世界中に深刻な影響が及びます。
プライマリー・ディーラーには入札に参加する義務がありますが、無限に国債を引き受けられるわけではありません。採算やリスク評価によって、要求金利の引き上げや応札量の減額が起きると、入札は事実上の機能低下に陥り得ます。
2025年9月30日は、アメリカの2025会計年度の最終日にあたり、いくつかの悪い条件が重なる特異日です。
この「お金を返さなきゃいけないのに、市場にはお金の余裕がない」という最悪のタイミングで、当日に決済が必要なプライマリ入札が行われます。
この日にプライマリ入札で売却が必要となる国債の概算値は…
約3,650億ドル 〜 4,150億ドル
(日本円で約50兆円以上)にも上ると試算されています。
※本レンジは償還・借換・短期債ロール、季節要因による資金需要を前提にした概算推定です。
この巨額の入札が「もしかしたら買い手がつかないのではないか?」という懸念が生まれています。これが「ワルプルギス」と呼ばれるシナリオの正体です。
「アメリカの話でしょ?」と思うかもしれませんが、もし本当にプライマリ売却不成立が起きれば、私たちの生活にも大きな影響が出ます。
この問題は、遠い国の難しい経済問題ではなく、私たちの生活の土台を揺るがしかねない重要なテーマなのです。