(この資料で説明するお金の仕組みは、 管理通貨制度 (世界では フィアットシステム と呼ばれているよ) に基づいています。)
この図は、 昔の 金本位制 のときのお金の流れを表しているよ。 ポイントは、国が持っている ゴールド(金) の量に基づいてお金(銀行券)を発行していたってこと。 お札は「 ゴールド引換券 」のようなものだったんだね。
この仕組みだと、お金の価値が ゴールド で保証されていて 安心感があった けど、ゴールドの量が足りないと 経済が成長しにくい っていう弱点もあったんだ。
【みんなのギモン①】 金本位制のときって、税金がないと政府は本当にお金を使えなかったの?
そうだね、 基本的にはその通りだよ! 金本位制では、中央銀行が発行できるお金の量は、持っているゴールドの量に 縛られていたんだ 。 だから、政府がたくさんお金を使いたくても、まずゴールドを集めるか、税金として国民からお金を集める必要があった。 もちろん、国債を発行してお金を借りることもあったけど、その国債も最終的にはゴールドとのつながりを意識したものだったんだ。今みたいに「 足りなければ円を発行する 」という考え方とは 大きく違うね 。
【みんなのギモン②】 ゴールドって、そんなにみんな価値を認めていたの?
うん、昔からゴールドはピカピカしていて綺麗だし、採れる量も限られているから、 世界中の多くの人が「価値があるもの」として認めていたんだ 。 だから、国境を越えた貿易でも、ゴールドが基準として使われることが多かった。 「このお札は、これだけのゴールドと交換できますよ」と国が保証することで、みんなが 安心してお札を使えたんだね 。
こっちの図は、 今の日本の フィアットシステム (管理通貨制度)でのお金の流れのイメージだよ。 金本位制とは大きく違うんだ 。 一番のポイントは、政府がお金を使うとき、 必ずしも「まず税金を集めてから」という順番ではない こと。
この図は左から右への一方通行に見えるけど、実際には 税金 の役割は「 通貨を使わせる仕組み 」を作ったり、「 景気調整 」をしたりと 多様で 、経済全体を循環させるための 重要な要素 なんだ。 伝統的に『 税 は国の活動のためのお金( 財源 )』と考えられてきたけど、 フィアットシステム では、それ以外にももっと 重要な役割がある んだね 。
【みんなのギモン①】 「国債発行」って政府の借金でしょ?借金からお金が生まれるって、どういうこと?
いいところに気づいたね! 普通、私たちがお金を借りるときは、誰かがすでに持っているお金を借りるよね。でも、 政府と中央銀行の関係はちょっと特別なんだ 。 政府が国債を発行し、それを中央銀行が買い取ると、中央銀行は政府の口座(日銀当座預金内の政府預金口座)にお金を「 新たに記録する 」ことで支払う。これが実質的に新しいお金(の元になる マネタリーベース という分類のお金だよ )を生み出す行為になるんだ。 「世の中に出回るお金の量」全体を指す マネーサプライ (またはマネーストック)には、この マネタリーベース の他に、民間銀行が生み出すお金なども含まれるよ。 だから、この「中央銀行が引受」の段階で増えるのは、主に 日銀当座預金の中のお金 で、これですぐにみんな(家計や企業)の手元にお金が直接届いて、 市中のお金の量が急に増えるわけじゃないんだ 。その理由は、この後の図で見ていくよ。
【みんなのギモン②】 じゃあ、政府はいくらでも国債を発行して、お金を増やしてもいいの?
「 いくらでも 」というわけにはいかないんだ。確かに、政府が自国通貨(円)で国債を発行する限り、 理論上は「お金が足りなくて返せない!」ということにはならない 。 でも、お金を増やしすぎることには 大きなリスク が伴うんだ。それは、 みんなも聞いたことがあるかもしれない インフレ (インフレーション) だよ。
世の中に出回るお金の量が、モノやサービスの量( 供給能力 )に対して 増えすぎてしまう と、お金の価値が下がってしまい、モノやサービスの値段が どんどん上がってしまう 。これがひどい インフレ だね。 そうなると、同じ金額のお金を持っていても買えるものが少なくなって、 みんなの生活が苦しくなってしまう 可能性があるんだ。
だから、政府や中央銀行は、 経済全体のバランス を見ながら、 インフレ率 などを注意深く監視して、お金の量を調整する必要があるんだ。 「 破産はしない 」ということと、「 いくら増やしても問題ない 」ということは イコールではない 、ということを覚えておこうね。この インフレ については、後の図でまた詳しく見ていくよ。
【みんなのギモン③】 税金として戻ってきたお金(「税として一部が戻る」→「会計処理上の清算」)は、その後どうなるの? また政府が使えるの?
税金として集められたお金は、 会計上は政府の収入として扱われ、予算にも計上される ね。そして、国債の利払いや償還(返済)に使われたり、次の支出の財源として計上されたりする。でも大事なのは、 フィアットシステム では 政府の支出能力が『集めた税金の額』だけに直接的に縛られるわけじゃない ってこと。 税金 がなくても政府がお金を生み出して支出できる 、という点が 金本位制 と大きく違うんだ。その上で、 税金 にはこんな役割があるよ。
といった、 もっと広い意味があるんだ 。だから、税収が直接次の支出額を決定づけるわけではない、と理解しておくといいよ。
この図は、政府が 国債 を発行してから、 実際にそのお金が民間に渡るまでのステップ を少し詳しく見たものだよ。 前の図の「中央銀行が引受」の部分をもう少し詳しく見てみよう。
つまり、 国債発行 して銀行がそれを買っただけでは、まだお金は 日銀内の政府口座に入っただけ で、 すぐには世の中(民間)のお金が増えて インフレ になるわけじゃない ってこと。「 政府の支出準備が整った 」という段階なんだね。
これから インフレ の話がたくさん出てくるけど、その前に大事なおさらいだよ! インフレ (モノやサービスの値段が全体的に上がり続けること)には、 主に2つのタイプ があるんだ。
日銀などの 金融政策 (金利を上げたり下げたりすること)で影響を与えやすいのは、主にこの デマンドプル・インフレ の方なんだ。 コストプッシュ・インフレ は、海外の資源価格とか、国際的な経済の動きが原因になることが多いから、 日本の金融政策だけで抑えるのはすごく難しい んだ。
だから、ここから先で「 インフレ が心配だ!」とか「 インフレ を抑えるために…」という話が出てくるときは、 特に断りがなければ、主に デマンドプル・インフレ のことを指している 、と覚えておいてね!
ちなみに、 今(2025年度)の日本 は、海外からの原材料価格の高騰や円安などによって、 コストプッシュ・インフレ の影響を強く受けている状態だと言われているよ。 一方で、長引くデフレの影響もあって、みんなのお給料がなかなか上がらず、モノを買う力( 需要 )が全体としてまだそこまで強くない。だから、今の状況から いきなり激しい デマンドプル・インフレ に変化するのはかなり難しい と考えられているんだ。 「国の借金が増えたら、明日から制御不能なハイパーインフレだ!」みたいに、 過度に心配しすぎなくても大丈夫 、という見方もあるんだよ。
【みんなのギモン①】 「プライマリ市場」って何?なんで銀行が買うの?普通の投資家は買えないの?
「プライマリ市場」っていうのは、新しく発行された株や債券(この場合は国債だね)が、発行者(政府)から最初に特定の買い手(主に銀行などの金融機関)に売り渡される市場のことだよ。 スーパーで言うと、 工場からお店に商品が初めて並ぶ感じかな? 日銀当座預金関係者ではない、 普通の投資家や、個人 (みんなもそうだね)などは、このプライマリ市場で国債を 直接購入することはできないんだ 。
銀行が国債を買う主な理由はいくつかあるよ。一つは、銀行が持っているお金(日銀当座預金など)を、基本的に利息が付かないか、ごくわずかな日銀当座預金に置いたままにするよりも、 少しでも金利が付く国債で運用した方が有利な場合がある から。もう一つは、国債は 比較的安全な資産 とされているからだね。 それに、ここでの国債の売買は、基本的に 売れ残りが出ないような仕組み ( 入札制度 )を使っているから、発行された国債は きちんと銀行などに買われることになるんだ 。
銀行が購入した国債は、 多くの場合、 満期まで保有する ことが多い んだ。途中で売ったりしないで、最後まで持ち続けるということだね。だから、 発行時の国債の金利がどうだったか 、という点が銀行にとっては重要になるけど、 市場で取引される際の価格変動が銀行の基本的なスタンスにすぐに影響するわけではない んだ。
国債の金利や価格の変動が主に話題になるのは、プライマリ市場の後に、金融機関同士や一部の投資家が国債を売買する「 セカンダリ市場 」での話だよ。この セカンダリ市場 での取引量は、国債全体の 発行残高から見るとその一部 (具体的な割合は経済状況によって変わるけど、例えば数%~十数%程度といったイメージだよ) だから、 ここでの価格変動がすぐに日本経済全体を大きく揺るがすような事態には繋がりにくい 、と考えられているんだ。
【みんなのギモン②】 「入札制度」ってどんな仕組みなの?
国債の「入札制度」っていうのは、国債を買いたい銀行などの金融機関が「 この値段(または金利)でこれだけ買いたいです 」と希望を出す仕組みのことだよ。 オークションみたいなイメージだね 。 国(財務省)は、できるだけ有利な条件( 低い金利 )で国債を買ってもらいたい。一方、銀行はできるだけ有利な条件( 高い金利や安い価格 )で国債を買いたい。 いくつかの入札方式があるけど、例えば「価格競争入札」なら、各金融機関が買いたい価格と量を提示して、 高い価格を提示したところから順番に買える権利が決まっていくんだ 。こうすることで、国は計画した量の国債を、 市場の実勢に合った条件で発行することができる 。 この仕組みによって、発行される国債が 売れ残ることは基本的にはないんだ 。
【みんなのギモン③】 政府の借金(国債残高)はすごく多いって聞くけど、「政府の支出準備」が整うってどういうこと? 政府はお金を使えるの?
それは 大事なポイント だね。ニュースとかで「 日本の借金が大変! 」ってよく聞くよね。これは国債の残高のことを指していることが多い。 でも、政府が新たに国債を発行して銀行がそれを買うと、その代金は 実際に日本銀行にある政府の口座(政府預金)に入金されるんだ 。 この 政府預金 を使って、政府は公共事業の支払いなど、 実際にお金を使うことができる 。つまり、「政府の支出準備が整う」というのは、文字通り、 政府が使えるお金が口座に入った 、ということなんだ。
「 国の借金がたくさんあるのになぜ新たにお金を使えるの? 」って不思議に思うかもしれないけど、これはフィアットシステム(管理通貨制度)の 重要な特徴 と関係があるんだ。 日本のように自国通貨(円)で国債を発行している場合、政府(と日本銀行)はその「 円 」を 自分たちで発行する力を持っている 。 だから、円建ての借金であれば、 理論上は返済するためのお金が足りなくなる(破産する)ということは考えにくい 、とされているんだ。 もちろん、無限にお金を発行できるわけではなくて、やりすぎるとひどい インフレ になるリスクがあるから、経済全体のバランスを見ながら慎重に行う必要があるけどね。 「 国の借金残高が多いこと 」と、「 新たに国債を発行して支出のためのお金を用意する能力 」は、 分けて考える必要があるんだよ 。
この図は、政府が使ったお金が民間の人たちの手に渡って、さらに世の中全体にお金( 預金通貨 という種類のお金 )が広がっていく様子を表しているよ。
もちろん、銀行も 無限にお金を創り出せるわけではなくて 、日本銀行に預けておかなければいけないお金( 準備預金 )の量や、銀行自身の体力( 自己資本の額など )といった、いろいろなルールや制約の中で行われているんだ。 この 信用創造 の詳しい仕組みは、また別の機会に見てみようね!
つまり、政府がお金を使うこと( 財政政策 )と、銀行がお金を貸し出すこと( 信用創造 )の 合わせ技で 、世の中のお金(特にみんなが使える 預金通貨 )は増えたり減ったりするんだね。フィアットシステムでは、こうやって経済の状況に合わせてお金の量を調整することができるんだ。
【みんなのギモン①】 「信用創造」って、銀行が本当にお金を作り出してるの? なんか不思議…
そうだね、初めて聞くとちょっと不思議に感じるかもしれないね! 銀行が物理的に紙幣を印刷しているわけではないんだけど、 会計帳簿の上で「お金を創り出す」と表現できるようなことをしているんだ 。 例えば、Aさんが銀行から100万円を借りるとする。銀行はAさんの預金口座に「100万円」と記帳する。この時点で、Aさんは100万円という 預金通貨 を手に入れたことになる。この100万円は、 誰かが預けたお金をそのままAさんに渡したわけではなく 、銀行の貸し出しという行為によって 新たに生まれたものなんだ 。 もちろん、銀行がこの「 信用創造 」をできる金額には 上限があって 、法律で決められた 準備預金 (日銀に預けておかないといけないお金の割合)や、銀行自身の財務状況(自己資本の額など)によって 制約されているよ 。だから、無尽蔵にできるわけじゃないんだ。
【みんなのギモン②】 政府がお金を使わない(「政府支出」がない)と、民間のお金は全然増えないの?
政府支出 は、民間にお金を供給する 大きなルートの一つ だけど、それだけじゃないよ。 例えば、日本企業が海外でたくさんモノを売って、その代金(ドルなど)を日本に持ってきて円に換えれば、国内の円は増えるよね(これは 貿易黒字 によるお金の供給)。 それから、銀行が企業や個人に積極的に貸し出しをすれば( 信用創造 )、 政府支出 がなくても民間のお金( 預金通貨 )は増える。 ただ、 経済が元気ないとき(不景気) は、企業も個人もお金を借りにくくなるし、銀行も貸し出しに慎重になることが多い。そういうときには、政府が積極的にお金を使うこと( 財政出動 )が、 経済を元気にするために重要になるんだ 。
この図は、「国の借金( 国債発行 )が増えると、すぐにひどい インフレ ( 主に デマンドプル・インフレ のことだよ! )になる!」っていうのは、 必ずしも正しくないよ 、ということを説明しているよ。
だから、大切なのは 国債 の金額そのものよりも、経済全体の 供給能力 と、政府支出を含めたお金の使われ方( 需要 の大きさ)の バランスなんだ 。 デフレ (物価が下がり続けること)で困っている今の日本のような状況では、 供給能力 にまだ余裕があると考えられるため、政府がもっとお金を使って 需要 を増やすことが、 経済を元気にするために必要だ とも言えるね。
【みんなのギモン①】 じゃあ、インフレにならないんだったら、いくら国債を発行しても大丈夫なの?
「 いくらでも大丈夫! 」とまでは言えないのが難しいところだね。確かに、自国通貨建ての国債で政府が 破産することはない 。 そして、 供給能力 の範囲内であれば、政府支出がすぐに 悪性の インフレ を引き起こすわけでもない。 でも、政府があまりにも無計画にお金を使いすぎると、いずれは国の 供給能力 の限界を超えてしまって、ひどい インフレ になるリスクが高まる。 それに、国債の量が増えすぎると、将来的に 金利が急上昇するんじゃないか とか、 円の価値が下がりすぎる( 円安 )んじゃないか とか、別の心配事が出てくる可能性もあるんだ。 だから、「 破産はしない 」ことと「 全く問題ない 」ことは イコールじゃない 。経済の状況を見ながら、 バランスを取ることがすごく重要なんだよ 。
【みんなのギモン②】 「供給能力」って、具体的に何のこと? 日本は大丈夫なの?
「供給能力」っていうのは、国全体でモノやサービスをどれだけ作り出せるか、提供できるかの力のことだよ。例えば、工場がどれだけ製品を作れるか、お店がどれだけお客さんに対応できるか、農家がどれだけ野菜を作れるか、お医者さんがどれだけ患者さんを診れるか…そういったもの全部を合わせたイメージだね。 日本の 供給能力 は、技術力も高く、たくさんの工場や働く人がいて、世界的に見ても非常に高い水準にある と言われているよ。だから、 戦争が起きたり、ものすごく大きな自然災害が続いたりするような特別なことがない限り 、いきなり国全体の 供給能力 がガクンと落ちてしまう(これを 供給毀損 (きそん)って言うよ)みたいなことには、なかなかならないと考えられているんだ。
むしろ、今の日本では、 供給能力が足りないことよりも、 需要不足 (みんながモノやサービスを十分に買えない・買わない状態)の方が問題視されることが多いんだ。 多くの人が「もっとモノを買いたい!サービスを利用したい!」と思っても、なかなかお給料が増えなかったり、将来への不安からお金を使うのを控えたりして、みんなが実際に使えるお金( 可処分所得 っていうよ )が伸び悩んでいると、全体の 需要 が抑えられがちになる。 企業も、モノがたくさん売れる見込みがないと、新しい機械を買ったり(設備投資)、たくさん人を雇ったりしにくいよね。こういう状況では、なかなか デマンドプル・インフレ (良いインフレ)は起こりにくいんだ。
それどころか、物やサービスがあまり売れない( 需要 が弱い)のに、原材料費の高騰などで商品の値段だけが上がってしまうと(これは コストプッシュ・インフレ だね)、ますます物が売れなくなって、企業の経営が苦しくなり、働く人のお給料も上げられず、結果的に国全体の 供給能力 (新しいものを作り出す力や、サービスを提供する力)までもが弱ってしまう…なんていう悪循環に陥る可能性だってあるんだ。
だから、 今の日本では、みんなが安心して使えるお金を増やして、健全な 需要 を育てていくことが、経済全体を元気にして、将来の豊かな 供給能力 を維持・向上させていくためにも、とっても大切 だと言われているんだよ。