2024年後半から2025年にかけて、新型コロナウイルスの新たな変異株「NB.1.8.1」が世界的に注目されています。このページでは、この新しい挑戦者に対して、既存のワクチンはどの程度有効なのか、そして「ワクチン先進国」へと転換した日本の戦略はどのように評価できるのかを、最新の情報を元に検証していきます。
NB.1.8.1 は、WHO(世界保健機関)によって「監視下の変異株(VUM)」に指定され、その急速な拡大が警戒されています。実際に、複数の国で感染の波を引き起こしています。
しかし、 現時点で、NB.1.8.1が他のオミクロン株系統より特に重症化しやすいという明確な証拠はありません 。その特徴は、高い感染力にあると考えられています。
遺伝子的にJN.1ファミリーに属するNB.1.8.1は、世界的に急速にシェアを伸ばしました。重要なのは、米国CDCの空港検疫において、 日本からの渡航者からもこのNB.1.8.1が検出されている 点です。これは、ウイルスがすでに国内に流入している可能性を示唆しています。
日本国内で当時主流だったKP.3株から、この新しい挑戦者へと主流が移り変わる可能性は十分に考えられます。各国で見られる「夏と冬の年2回の流行サイクル」を考慮すると、NB.1.8.1が次の流行の波を引き起こす可能性に備え、医療体制の準備とゲノム監視を続けることが不可欠です。
現在、日本で使用されているワクチンは オミクロンJN.1系統 を標的としたものです。では、その子孫であるNB.1.8.1に対して効果はあるのでしょうか。
結論から言えば、専門家は「既存のJN.1対応ワクチンは、NB.1.8.1に対しても十分な重症化予防効果が期待できる」と考えています。
WHOの諮問グループも「JN.1対応ワクチンは引き続き適切」との見解を示しており、実験室レベルの分析でも、NB.1.8.1の免疫回避能力は他の変異株と比べて突出して高いわけではないことが分かっています。抜本的な免疫逃避は起きていない、というのが現時点での評価です。
米国FDAの諮問委員会などでも議論されましたが、NB.1.8.1のためだけに専用ワクチンを開発する必要性は低いとされています。ウイルスの進化は非常に速く、専用ワクチンが完成する頃には、また新しい変異株が主流になっている可能性があるためです。
現在の戦略は、インフルエンザワクチンと同様に、状況に応じてワクチン株を少しずつ更新(アップデート)していくというものです。例えば、次のシーズンに向けて、NB.1.8.1にもより高い効果が期待できる LP.8.1株 などをベースにしたワクチンを準備する、といった対応が検討されています。
2024年秋から、日本ではコロナワクチンの年1回の定期接種が始まりました。このタイミングで登場したのが、国産の次世代mRNAワクチン 「コスタイベ」 です。
これは レプリコンワクチン と呼ばれる新しい技術で、注射後に体内でワクチンの成分(mRNA)が自己増殖します。これにより、以下の大きなメリットが生まれます。
この「持続性」は、年1回の定期接種という方針と非常に相性が良いと言えます。
この年間接種を、多くの国民が毎年受ける「国民健診(特定健診など)」と連携させるというアイデアは、公衆衛生上、非常に合理的です。健診のついでに接種の案内や予約ができれば、利便性が大幅に向上し、接種率の向上が期待できます。これは、予防医療を社会に根付かせるための優れた相乗効果を生む可能性があります。
「ワクチン敗戦」と揶揄された状況から一転、日本が国産の次世代ワクチンを戦略の柱に据えたことは、科学的・産業的・地政学的な観点から、多くのメリットがあると考えられます。
コスタイベは、世界で初めて実用化されたレプリコンワクチンであり、日本の科学技術が最先端分野で世界をリードした証です。この技術基盤は、将来登場するであろう新たな変異株や、他の感染症に対するワクチン開発にも迅速に応用できます。また、国内の製薬・バイオ産業を活性化させ、ハイテク分野の雇用と専門知識を国内に蓄積する経済効果も期待されます。
パンデミック初期、日本はワクチンの供給を海外からの輸入に完全に依存し、確保に苦心しました。自国でワクチンを安定的に生産できる体制は、輸出制限や国際情勢の急変といった地政学的リスクから国民を守る、 国家の健康安全保障そのもの です。
海外の大手製薬企業に依存し続けることは、価格交渉や安定供給の面で常に不安が伴います。国産ワクチンを主軸に据えることで、日本は自国の公衆衛生政策を、より自律的に、そして安定的に進めることができるようになるのです。