インターネット上、特にSNSにおいて、尾身茂氏の発言の一部を意図的に切り取り、文脈を完全に無視して氏を批判する言説が散見される。これは単なる誤解ではなく、特定の意図をもって事実を歪曲し、世論をミスリードしようとする 醜悪な歴史捏造行為 に他ならない。
本稿では、その卑劣な手法を白日の下に晒し、科学的知見に基づいた専門家が、実際に何を語っていたのか、その真実を記録するものである。
反ワクチン派が批判の根拠として利用しているのは、以下の極めて短い、切り取られた発言である。
「感染防止効果は残念ながらあまり無いワクチンです」
この一文だけを提示し、「ならばなぜ接種を推進したのか」「無責任だ」と糾弾する。しかし、これは情報の受け手を欺くための、悪意に満ちた罠である。
では、尾身氏は実際に何を語っていたのか。以下が、当該番組におけるワクチンに関する議論の、歪曲されていない発言の全文である。
【司会】 「本当にワクチンって安全なんですかと。同調圧力で打たなきゃいけない、みたいなところになって、皆さんどんどん打ってった。で、それに対して副反応が起こってみたり、ワクチン後遺症になった。本当にこのワクチン、特にmRNAタイプのワクチンを信用して、信頼していいのかどうなのかっていうところを是非伺いたいんですけれども」
【尾身氏】 「えっとですね、せっかくこんな大事な番組を出させていただいたんで、これは皆さん初めて聞くかもしれませんけど、このワクチンの副反応、ワクチンを打ったことによる反応がどれだけあったかの分析は、我々分科会、感染症の分科会では全くやってないんです。これをやったのは、厚労省にあったワクチン分科会っていうのをやってるんです。そういうことをまず申し上げて上で、 私の私見を申し上げると、まず有効だったかどうかという話を結論から言うと、感染防止効果、感染を防ぐ効果は残念ながらあまりないワクチンです。これリアリティです。だからワクチンがあったら絶対もう感染しないという保障はないし、実際に感染した人が多い。これがまず感染防止効果ですね。
じゃあ今度もう一つの有効性の分野は、重症化、死亡をどれだけ防ぐのかってなりますよね。 それをちょっと連れ出してもらいますか。(データパネルを指して)これで一番左、右の方を見ると70歳、80、90。それで一番このグラフの縦線が一回も打たなかった人は左。この一番緑のところですね。これを見ると明らかで、たくさん打った、5回打った人の死亡率は圧倒的に、これは埼玉県のデータですけど、これは全国的に一緒。 一番分かりやすい、90歳以上で、一番差が出ているところでいうと、接種がない人が11.1%なくなっていて、5回の方が2.8%。これは日本だけじゃなくて、国際的にこのことはもう確かめられている。
つまりこのワクチンは 感染防止効果は残念ながらあまり良くない。我々もがっかりしました。ところが重症化予防効果、特に高齢者における、これは間違いなくある。 」
上記の全文を読めば、尾身氏の主張が極めて科学的かつ誠実なものであったことは、良識ある人間には即座に理解できるはずだ。
要するに尾身氏は、「ワクチンは万能ではないが、命を救うという最も重要な目的は間違いなく達成している」という、専門家として当然の、そして責任ある説明をしていたに過ぎない。