現代における「非科学的治療忌避団体の象徴」とも言える、「反ワクチン派」の荒唐無稽な主張を、 公的データと客観的な事実 を基に、その主張が如何に非合理的であるかを、明確に論証します。
近時、新型コロナウイルスワクチンに関して 「コロナワクチン登場以前は、ワクチンの副反応で人が亡くなることはほとんどなかった」 「健康な人に投与するワクチンで重大な副反応は起きてはならない」 といった言説が見られます。これらの主張は一見すると「常識」のように聞こえますが、事実に基づいた検証を経たものでしょうか。
本レポートでは、これらの主張を以下の4つの柱で徹底的に検証し、その論理的破綻を明らかにします。
まず、事実の根幹となる 国の公的データ を確認します。
ご指摘の通り、健康な人に投与する ワクチン と、既に発症した人が使用する 治療薬 は全く異なります。だからこそ、日本では 1977年から「予防接種健康被害救済制度」という、世界でも手厚いとされる制度が存在します。
この制度の最大の特徴は、厳密な科学的因果関係の証明がなくとも、 「ワクチン接種と健康被害との因果関係が否定できない」と専門家が判断した場合に、迅速な救済を行う点 にあります。これは 「ゼロリスクはない」という前提に立ち、万が一の健康被害に国が責任を持つ という姿勢の表れです。
では、その新型コロナワクチンでの認定状況はどうでしょうか。 厚生労働省の最新の発表(2025年5月30日審議結果) によると、以下の通りです。
この「1,018件」という数字は、 ワクチンが直接の死因であると医学的に証明された数ではなく、「ワクチン接種後の死亡であり、接種との因果関係が否定できない」と判断され、救済給付が決定した数 です。
次に、 「コロナ以前はワクチンの副反応で亡くなることはほとんどなかった」 という主張を検証します。 同救済制度における、制度開始から約45年間の、新型コロナワクチンを除く全てのワクチンにおける死亡関連の認定件数の累計 は以下の通りです。
確かに、数字だけを単純比較すれば、新型コロナワクチンの死亡認定数(1,018件)は、過去45年間の累計(151件)を大幅に上回っています。反ワクチン派はこの一点をもって 「コロナワクチンは猛毒だ」 と主張します。
しかし、この比較は 統計の基本である「分母」を完全に無視した、極めて意図的なミスリード です。
つまり、新型コロナワクチンは、 人類史上例を見ない規模と速度で、極めて短期間に、全国民を対象に繰り返し接種された ワクチンです。過去45年間の多種多様なワクチンの接種回数を全て合計しても、この4億回という規模には遠く及びません。
接種回数が桁違いに多ければ、それに伴い、健康被害の認定数が増加するのは統計的に当然の帰結 です。分母を無視して分子の数だけで危険性を煽る手法は、非科学的かつ不誠実と言わざるを得ません。
データを示すと、反ワクチン派は決まって 「国が発表する数字は氷山の一角だ。報告されていない被害者(=暗数)がもっといる」 と主張します。
「暗数」とは、統計上に現れない数字のことで、確かに存在します。しかし、ことパンデミック下のワクチン接種においては、その逆の現象、すなわち 「報告バイアス(特に、刺激駆動報告バイアス)」 を考慮する必要があります。
これは、メディア報道や社会的な関心が特定の事象に集中することで、 通常であれば見過ごされるような症状や、ワクチンとは無関係の偶発的な出来事までもが「副反応ではないか」と疑われ、積極的に報告される傾向 を指します。
新型コロナワクチンでは、社会全体の不安が極度に高まっていたため、この報告バイアスが強く働いた可能性が専門家から指摘されています。つまり、 「暗数」による過小評価と、「報告バイアス」による過大評価の両方を考慮するのが、科学的な態度 です。
それでも「国は信用できない」と主張する方のために、極端な仮定で計算してみましょう。
国の死亡認定数「1,018件」が、仮に「氷山の一角」であり、実際には報告されていない「暗数」が大量に存在すると仮定します。その割合を、極めて過大に 「報告されているのは全体の1%に過ぎず、実際はその100倍の被害者がいる」 と設定してみましょう。
1,018人(認定数) × 100倍(過剰計算) = 101,800人
これでも約10万人です。反ワクチン派がSNSなどで流布する 「ワクチンで数十万人が死んだ」「100万人以上が殺された」といった言説とは、天文学的な乖離 があります。彼らの主張を成り立たせるには、国の認定数の実に数百倍~千倍もの「暗数」が存在しなければならず、もはや陰謀論の域を出ません。
主張の根拠がデータで崩れると、彼らはしばしば「未来に起きる災厄」を予言します。しかし、その予言はこれまでどうだったでしょうか。
「mRNAワクチンは人間の遺伝情報を書き換える」「スパイクタンパク質が胎盤を攻撃し、女性は不妊になる」「ワクチン接種者は2年後に死ぬ」 といった言説が流布されました。
「接種者の呼気や汗から毒素が排出され、未接種者に健康被害を及ぼす」 という主張が盛んになりました。
パンデミック下の「超過死亡」の増加を全てワクチンのせいだと断定する 主張が中心になりました。
2025年6月の現在、これらの主張の結末は明白です。
自らが立てた「予言」がことごとく外れているにもかかわらず、彼らは決して自説の誤りを認めず、次々と新たな「危機」を主張し続けているのが現実です。筆者は2025/06/06現在、彼らが忌避するmRNAワクチンを5回接種していますが、一度として5G回線のアクセスポイントになったことはありません。
彼らの主張がいかに無根拠で悪意に満ちているかは、直近の「レプリコンワクチン(製品名コスタイベ)」を巡る騒動で、誰の目にも明らかとなりました。
改めて、事実を整理しましょう。
その上で、「国は信用ならない」と主張する姿は、客観的に見てどのように映るでしょうか。自らの主張の誤りを一度も検証せず、データに基づいた反論に耳を貸さず、新たな陰謀論に乗り換えていく団体が「真実を伝えている」と考えるのは、あまりにも非合理的です。
「健康な人に投与するワクチンは、重大な副反応は起きてはならない」というのは、理想論としてはその通りです。しかし、
現実の医学・科学において「絶対安全」「リスクゼロ」は存在しません。
当然、これは「ワクチン」に限らず、たとえ風邪薬(例えばPL顆粒など)のような、一般的に「安全」と思われている治療薬を含め、
全ての医療、ひいては「全ての事象」に該当する「普遍的真実」
です。
だからこそ、その極めて稀なリスクと、感染症がもたらす甚大な被害を天秤にかけ、国や専門家は推奨の判断を下し、万が一のための救済制度を設けています。
データと事実に基づかず、ただ不安を煽り、外れ続けた自説を顧みない団体の主張と、不完全ながらもデータに基づき制度を運用する国のどちらが「信用に値しない」かは、火を見るよりも明らかです。彼らの主張は、もはや議論や思想ではなく、検証に耐えられない 「笑止千万の虚構」 と言断ぜざるを得ません。