5. あやしい治療法のウソ・ホント ~なぜ騙されちゃうんだろう?~

これまでのページで、科学的根拠に基づく「標準治療」の大切さや、新型コロナウイルスの本当の怖さを学んできました。しかし、人が大きな病気になったり、不安になったりすると、どうしても「奇跡」にすがりたくなってしまうのが人間の心です。

そして、その心の隙を狙って、あやしい治療法を勧めてくる人たちがいます。この最後のページでは、そうした危険な罠から自分や大切な人を守るための知識を身につけましょう。

Q1. ここでいう「あやしい治療法」って、どういうものですか?

A1. これは、「ガンが治る奇跡の水」や「免疫力を高める特別サプリ」のように、病気の完治をうたいながらも、その 効果や安全性が科学的に全く証明されていない治療法 のことです。

「自然由来で安心」「最先端の量子エネルギーで…」といった、耳障りの良い言葉で宣伝されることが多いですが、最初の記事で学んだ 標準治療 のような、厳しい科学的テストを一切経ていません。中身はただの水だったり、効果のない健康食品だったりすることがほとんどです。

Q2. でも、有名な人もそういう治療を受けていると聞きますが…?

A2. とても悲しく、そして重要な点です。その最も有名な例の一人が、Appleの共同創業者である スティーブ・ジョブズ氏 です。

彼は、手術で治る可能性が高かった種類のすい臓がんと診断されました。しかし彼は最初、標準治療である手術を拒否し、食事療法やハリ治療といった代替医療に頼ってしまったのです。数ヶ月後、彼がようやく手術を決意した時には、すでにガンが転移して手遅れの状態でした。多くの専門家は、「もし彼が最初から標準治療を受けていれば、もっと長く生きられた可能性が高い」と考えています。

どんなにお金持ちでも、どんなに賢い人でも、病気への恐怖心から間違った希望にすがってしまうことがある、という痛ましい教訓です。

Q3. なぜ人は、あやしい治療法に騙されてしまうのでしょうか?

A3. 人の不安や希望を巧みに操る、いくつかの決まった手口があるからです。

  • 標準治療への不信感をあおる : 「医者は抗がん剤という毒を使いたがる」「現代医療は金儲けの陰謀だ」などと言って、効果が証明されている治療への信頼を失わせようとします。
  • 個人の「体験談」を強調する : 「〇〇さんはこれで治った!」というような個人の感想を並べ立てます。しかし、それは科学的なデータではありません。偶然良くなった一人の裏には、悪化した何百人、何千人がいるかもしれませんが、その事実は決して語られません。
  • 難しいニセ科学用語を使う : 「量子波」「波動エネルギー」「デトックス」など、一見すると科学的で凄そうに聞こえる言葉を使いますが、そのほとんどは意味のないデタラメです。
  • 「楽に治る」と約束する : 標準治療には副作用が伴うこともあります。そこにつけこみ、「痛みも苦しみもなく、楽に治りますよ」と甘い言葉で誘惑します。

Q4. 結局、私たちが身を守るために一番大切なことは何ですか?

もし、誰かが「奇跡の治療法」の話をしてきたら、思い出してください。
「本当に素晴らしい治療法なら、隠れたりしない。科学の光の下で証明され、いずれは堂々と『標準治療』になるはずだ」ということを。

あやしい治療法の最大の問題は、 「効果が証明された本当の治療を受ける時間を奪ってしまう」 ことです。そして、万が一健康被害が起きても、彼らは絶対に責任を取りません。

あなたの命と健康は、誰かの感想やあやふやな話に委ねていいほど、軽いものではありません。科学という、人類が積み上げてきた最も信頼できる「ものさし」を信じてください。それこそが、あなたを守る最強の盾なのです。


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