パートⅡ ― 世界を駆ける伝播

更新日: 2025-09-30 · 用語集

エグゼクティブサマリー:余震の連なり

米国債市場の崩壊が本震だとすれば、その後に押し寄せるのが余震です。ドルデフォルト危機(DDC)は閉じ込められず、密接につながった世界の金融網を一瞬で駆け抜けます。防火壁も、完全な避難所もありません。

ここでは、その伝播経路を地図のようにたどります。震源のアメリカから欧州、アジア、そして新興国へ。極端な想定では、失われる金融資産だけで32兆ドルを超える規模になります。

どこで、どのように致命傷が訪れるのか――

  • 欧州: 成長が止まり、政治は麻痺し、国家債務への恐怖が戻ります。
  • 日本: 巨額の米国債保有が評価損に変わり、預金者と年金が直撃を受けます。
  • 中国: 不動産崩壊に世界のショックが重なり、恐れていた「ミンスキー・モーメント」が現実化します。
  • 香港: 安定の象徴だったドルペッグが、破滅を伝えるベルトへと変わります。

こうして一国の失敗が、世界全体の災厄へと姿を変えます。だからこそ、新しい国際的な枠組みは「あると良いもの」ではなく「なければ生き残れないもの」なのです。

第2章:ドミノ効果 ― 衝撃はこうして伝わる

DDCは震源です。最初の衝撃波は四つの全球的な経路を通って広がり、「米国債はリスクフリー」という神話で組まれた土台に亀裂を入れます。

  1. 各国の直接的な損失: 米国債を外貨準備として抱える国家のバランスシートが一夜にして削られます。
  2. 為替の混乱: 円やスイスフランといった「安全通貨」に逃げ込む動きが高まり、輸出産業を圧迫します。
  3. 世界的な銀行凍結: ドルが不足し、銀行同士で支払いを決済できなくなります。信用の流れが2008年をはるかに上回る規模で凍り付きます。
  4. 株式市場の暴落: 基盤だったリスクフリー資産が消え、他の資産が一斉に値下がりする連鎖が生まれます。

これらの経路がそろうことで、危機は封じ込め不能になります。伝染は構造で決まっており、選択の余地はありません。

国・地域ごとの余震

日本 ― 世界最大の債権国が最初に倒れる

脆弱性: 1.1兆ドルの米国債を直接保有。
影響: 銀行と年金に即時の支払い能力危機が走ります。安全通貨として円が急騰し、輸出は苦しくなり、デフレの渦が再び深まります。

欧州 ― 銀行危機と政治の分断

脆弱性: 銀行がドル調達に大きく依存。
影響: 流動性が枯れ、巨大銀行が身動きできなくなります。ユーロ圏の債務危機が再燃し、北と南の亀裂が広がります。

中国 ― 「ミンスキーモーメント」の到来

脆弱性: 商業不動産(CRE)と地方融資平台(LGFV)の負債が膨張。
影響: 外部ショックであるDDCが引き金となり、デフォルトが連鎖。不動産の問題が全国規模の銀行危機へと変貌します。

香港 ― ペッグが首を絞めるロープに

脆弱性: 米ドルに法的に連動した通貨制度。
影響: ペッグを守るために米国と同じ金利まで引き上げなければならず、経済が耐えられません。ペッグが切れ、価値の崩壊がアジア全域へと伝わります。

結論: 世界は分断されたままです。DDCは共通の脅威に立ち向かう団結を生まず、むしろ国境を閉ざし、資本規制や通商障壁、疑念を加速させます。

だからこそ、新しい生存の建築――Horizon Protocol(THP)――が必要なのです。理論ではなく、余波の中で暮らしを守るためのインフラとして理解してください。

ミニ用語集(拡張版)

伝播(コンテイジョン)
金融ショックが市場や国を次々と移っていく現象。金融システムに広がるウイルスのようなものです。
各国の直接損失
米国債を外貨準備として持つ政府が、崩壊によって「雨の日の備え」を一夜で失うこと。
為替の混乱
投資家が円やスイスフランといった安全資産に殺到。しかし通貨高は輸出を傷つけ、安全地帯が罠に変わります。
安全資産への逃避
恐怖のあまり金や円、スイスフランに資金を移す本能。全体を安定させるどころか、輸出を弱らせ、世界貿易を一層揺らします。
世界的なドル不足
国際取引と銀行業務の多くはドル建て。ドルが枯れると、健全な銀行であっても互いに支払いができず、商取引が停止します。
株式市場の壊滅
基盤のリスクフリー資産が消えると、他の資産がドミノ倒しのように値下がりします。
ユーロ圏の分断
強い経済(例:ドイツ)と弱い経済(例:イタリア)の借入コストが危機時に大きく乖離し、通貨同盟そのものが脅かされる状態。
CRE(商業用不動産)
オフィスや商業施設、ホテルなど。コロナ禍後の空室を抱え、世界的な景気後退で一気に不良資産化します。
LGFV(地方政府融資平台)
中国の地方政府がバランスシートの外で資金を調達するための影の器。ストレスが高まると、隠れていた負債が表に出ます。
香港ドル・ペッグ
1米ドル≒7.8香港ドルに固定する仕組み。危機では、ペッグ防衛のために外貨準備が失われるか、金利を極端に上げざるを得ず、経済が窒息します。
分断 vs. 統合
協調ではなく、国が壁を築く方向に進む動き。資本規制や関税、失われた信頼が分断を深めます。
Horizon Protocol(THP)
ワルプルギス後に社会を機能させ続けるための青写真。自動スワップライン、サプライチェーンのバックアップ、倫理的な執行を備えた安全網を提案します。

読者へのまとめ(1ページの要点)

  • 本震: 米国債の崩壊(DDC)。
  • 余震: 日本、欧州、中国、香港が次々と倒れます。
  • 仕組み: 直接損失、為替混乱、銀行凍結、株価暴落がバトンのように危機を渡します。
  • 結末: 協調ではなく分断。資本規制と貿易摩擦、不信感が残ります。
  • 答え: THP のような生存インフラを整え、ワルプルギス後も生活を回し続けること。